小説「妻恋坂マンション」

オリンピックと高校野球が終わるとプロ野球のペナントレースもいよいよ終盤戦。
パリーグの優勝争いが面白くなってきました。

さて、昨日、小説「狭小邸宅」のご紹介をさせていただきましたが、現在マンションにお住まいの方、これからマンションを購入しようと思われている方に是非お奨めしたい小説が、「妻恋坂マンション~あなたのマンションは騙されていないか?~」
(鬼島紘一著  徳間文庫  定価660円+税)です。

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耐震偽装や杭打ちデーターの偽装など、ハード面のみがクローズアップされがちなマンションですが、マンションではハード面と同等以上に、管理などのソフト面が重要です。
この小説は、管理費や修繕積立金などの金銭をめぐる管理会社と管理組合(理事等の役員)の癒着や馴れ合いなどの人間模様を描いた小説です。
文字が小さくて少し長めの小説ですが、分かり易い文章なので、本を読むのが苦手な人でも割りとスラスラ読めます。

著者は、大手ゼネコンにも勤務した経験を持ち、他にも「告発」「談合業務課」などの建設業界の裏の部分を題材とした著作があります。

物語は、中古マンションに引っ越してきた主人公がある日理事会に出席して、過去に不審な大規模修繕工事が行われた疑いを持ちます。しかし他の理事の誰もが、不正を追求するどころか、管理会社とグルになって丸め込もうとする始末。ますます疑惑を持った主人公は、たったひとりで調査を始め、やがて大きな不正を暴き出す・・・というものです。

手抜き工事よりも怖い? 無関心な管理組合運営

組合員である住民たちが、自分達の所有物であるマンションの管理を、他人任せで一切関心を持たないでいると、この小説の様な事件はいつ起きても不思議ではありません。(現実に起きていると思います。私が以前住んでいたマンションでも、理事長と大規模修繕業者の癒着に関する怪文書が出回った事がありました。)
かくいう私も、今まで仕事の忙しさを理由に、自分の住むマンションの総会など一度も出席した事がありませんでした。
たまに総会や理事会の議事録に目を通し、組合員のアンケートに回答する程度で、組合員の責任を果たしたつもりになっています。
仕事では、人の相談に乗っていても、自分の事となると全く何もしてこなかったので、偉そうにいえる立場ではありません。
この小説は、そうした住民の無関心さが、ある面では手抜き工事よりも深刻な問題を引き起こす可能性がある事を教えてくれます。これを読んで、次の総会には出席しようと思う方もきっと多いと思います。

以下小説からの引用です。
マンションは、隣近所との煩わしい付き合いを避けたい人たちには至極住みやすい住居だ。そういう人たちにとって管理組合に関わることもまた煩わしい。誰かに任せられるものなら、そうしたいという人たちの集まりであると言っても良いくらいだろう。
しかし、そこに大きな落とし穴があることにほとんどの人たちは気がついていない。いや、気付こうとさえしないというのが現実だろう。(中略)
あなたのマンションは騙されていないか。いま一度、確かめられてはいかがだろうか。

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