性能向上インスペクション

(株)帝国データバンクが発表した2017年1月の全国景気動向調査によると、「建設」など4業界が悪化、「不動産」などの6業界が改善したといいます。
建築関連は引き合いが多いのですが、職人不足で客先に待ってもらう状況だといいます。
どこの会社も、ピーク時に合わせて職人を雇用する訳にはいかないので、建設会社の経営者にとっては悩ましい問題です。

さて、中古住宅売買時の建物検査や住宅取得後の維持管理時の定期的な点検等は、目視等を中心とした非破壊による調査で、構造安全性や日常生活上の支障があると考えられる劣化事象等の有無を把握しようとするものです。
一般的にホームインスペクションと言われているものがこれにあたり、不具合の原因追求を目的としていません。「一次診断」とか「住まいの健康診断」と言われる所以です。

一方、リフォームの実施前にリフォーム事業者(設計・施工・改修事業者等)が建物全体の劣化状況・性能を把握し、リフォーム計画立案の参考とするための調査は、「性能向上インスペクション」と呼ばれています。
状況によっては、劣化の生じている範囲や不具合の原因を把握するために、破壊検査を行う事もあります。
不具合の範囲や原因が不明のままでは、改修計画も見積書も作成できないためです。
私が住宅会社で長い間行っていたのはこの様な調査で、今も最も得意とするものです。
建物の状態を的確に把握し、修理・改修を提案・実施するためには不可欠で、不動産の仕事しか経験のないホームインスペクターには困難だと思います。

ジェルコが認定するインスペクター

この様な不動産価値を判断するために行う通常のホームインスペクションとは異なるインスペクターを認定しているのが、一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会(通称ジェルコ JERCO)です。ジェルコは国内最大のリフォーム関連企業の全国組織で、増改築相談員研修会やリフォームデザインコンテスト全国大会などを開催し、会員企業のスキルアップをはかっています。

「ジェルコ・インスペクション」は、建物の構造的な状況把握や評価、リフォーム提案に活かすためのもので、耐震性はもちろん、耐久性・断熱性などでも現行基準に対して劣っている住宅の性能向上を目指します。新たに破壊検査も含めた診断基準を設け、推進している様です。

そして、部分改修、段階的改修、大規模改修に関らず必ずインスペクションを実施し、リフォームの入り口にインスペクションを置く事で、通常のリフォーム工事を行いながら、建物の長期優良住宅化を実現するという発想です。

この様に「インスペクション」と言っても、消費者や事業者によってそれぞれ別のものをイメージしていて、検査業務を行う者の資格や検査の基準、検査業務を行うための実務経験や研修等の有無についても、国内で統一されている訳ではありません。

ホームインスペクションの目的は何なのか、「物件購入前の建物のコンディションの把握」なのか「発生している不具合の原因調査」なのか「建物補償のための検査」なのか「リフォーム実施前の建物の構造や性能の把握」なのか等によって、インスペクションの難易度も異なります。
ホームインスペクションを依頼する際には、それぞれの目的に合ったホームインスペクターに依頼する事が重要です。

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既存住宅現況検査技術者講習テキストより

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