耐震診断の地域係数と評点

免震構造は地面の揺れが建物本体に伝わりにくくする構造で、どんな地震にも安全だといわれてきました。
しかし熊本地震以来、長周期振動では建物に想定外の揺れが生じたと言われる様になり、一部の専門家の間ではその安全性に疑問が持たれている様です。
東日本大震災で大きな建物に被害がさほど生じなかったのは、地震動が短周期であったためといわれます。
どんな建物でも、想定外の揺れを受ければ「絶対安全」という事はないと思いますが、更なる検証が待たれます。

さて、耐震診断を実施するとその結果は評点という数値で表わされます。
評点とは正確には「上部構造評点」といい、設計図書や現地調査をもとに構造強度を計算して数値を出します。
2階建て以上の建物については、階ごと、地震力を受ける方向ごとに評点を計算し、最も低い評点がその建物の評点となります。
一般的には評点1.0で建築基準法に定める最低限の耐震強度があると考えられ、大規模な地震に対して倒壊または崩壊する可能性が低いと考えられています。

ところがこの評点にも見直しが必要だと思います。
一般的には、同じ地盤に同じ建物が建っていたら、全国どこに建っていても同じ評点になると考えられがちです。
ところが耐震診断では「地域係数」という値が使われていて、地域により1.0、0.9、0.8又は0.7という指標で区分されています。
これは過去の地震記録や地震活動状況等に応じて、「地震が発生しやすい地域」に1.0という数値を与え、それと比較して「相対的に地震が少ないと思われる地域」には0.9、0.8あるいは0.7(沖縄県のみ)という数値が与えられ、指数に応じて設計地震力を低減できる事になっているもので、国土交通省の告示によって決められています。

大地震で倒壊する・しないを分けるものは?

先の大地震で多くの建物に被害があった熊本県の多くは地域係数0.9(一部地域は0.8)で、元々10~20%耐震強度が割り引かれた建物が多かったものと思われます。

では耐震診断で評点1.0未満なら絶対に大地震で倒壊してしまうのかというと、そうともいえないのが難しいところです。
実際の建物が地震力を受ける場合に、耐震診断では耐力が期待できないという理由で無視していた(存在しないものとして考えていた)雑壁なども、地震に対して効果がある事がわかっていて、現在の耐震設計は過剰だと言う専門家もいるほどです。

私は構造の専門家ではないので詳しい事はわかりませんが、今まで数多くの現場を見てきて、施工状態にも非常に大きな差があるのを感じています。
熊本地震では、築年数の経過した古い建物が奇跡的に倒壊を免れた例もあれば、新しくて見た目も丈夫そうな建物や、耐震等級3の建物が倒壊したり大きな被害を受けている様子を見ると、案外倒壊する・しないを分けるのは、完成すると見えなくなってしまう構造部分の施工の良し悪しの問題が予想以上に大きい気がしてなりません。

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鉄筋コンクリート造住宅の現場

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