ここのところ、様々な事件や出来事が世間を騒がせていて、ニュースの話題に欠くことはない様ですが、私が一番関心があるのは、やはり職業柄人気テレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」で、建設会社が提訴したというものです。
問題となった番組は、2014年7月に放送されたものとされていて、訴状によると、追加発生した工事費など約2,900万円の損害賠償を放送会社や番組制作会社、建築士事務所などに対して求めたものだそうです。
現場は岐阜市内の店舗併用住宅で、「匠」は建築家A氏。もとは店舗だった1階部分で主に生活しているため、靴を脱いでくつろぐ事ができない、他には、狭い、極端に使い勝手が悪い間取り等お決まりの問題を抱えた住まいを、どの様に解決するかがテーマでした。
リフォーム工事を請け負ったのは愛知県東海市の建設会社N社で、リフォーム代金は、当初2,200万円の予定だったものが、匠(A氏)や制作会社の指示で追加工事が多数発生。代金は約5,000万円に膨らんだものの、建設会社には追加工事代金は一切支払われず、番組では「工事は予算内で納まった」と紹介されたと言います。
私も放送開始当初からこの番組には注目していて、頻繁に見ていたのですが、当初から工事代金には疑問を持っていました。
工事内容の割りに、費用があまりにも安いのですが、「テレビの演出なので仕方がないのだろう」と思って見ていました。
私達業界関係者以外の一般の視聴者の方でも、番組で紹介される工事費を100%真に受けている方は少なかったと思います。
テレビの住宅番組の功罪
しかし、2,200万円の予算に対して、約5,000万円かかったという話が本当なら、「テレビ番組の演出だから」で済まされる話ではありません。公共の電波を使った立派な詐欺行為で、悪徳リフォーム会社と何ら変わらないでしょう。
また、これだけの予算をオーバーする様な設計をする匠は、プロの建築家とは到底言えません。
街のリフォーム会社がこんな設計をしたら、一度で倒産してしまいそうです。
この匠は、新築工事の実績は豊富でも、リフォームの経験はほとんどなかったのかもしれません。
番組を手掛けた朝日放送では、「追加工事の多くは、建設会社の現場管理に問題があったため発生した」と回答しているそうですが、2,200万円の工事で、3,000万円近くの追加費用が発生するとは、常識ではちょっと考えられないでしょう。
想定外の補強工事や、図面通りに施工できない内容が多数発生したためと考えるのが普通です。リフォームの経験が少ない建築士が設計すると、ありがちな事です。
一方、建設会社社長は「放送は事実と違い納得できない。また、追加工事や変更工事が発生した場合は、その都度打ち合わせを行う事になっていたが、打ち合わせは一切行われなかった。」と真っ向から対立しています。
今後の動向に注目したいと思います。