「リノベーション」という言葉が定着して久しくなりました。
リノベーションとは本来リフォームよりも大規模な改修工事の事をいい、既存の構造のみを残して用途や機能を向上させたり価値を高める事をいいます。
しかし中古マンションの再販業者の中には対面キッチンにして住宅設備機器を交換し、全室の内装を新しくした程度でもリノベーションと言っている様なのでリフォームとの区別が曖昧になっています。
近年では中古住宅を購入してリノベーションする人が増えていると言われていますが、実際のところそのような方は1割にも満たない少数派なのではないかと思います。
私が勤務していたリフォーム会社でも、そのような方は年に数名いるかどうかでした。
住宅購入を考えている人の選択肢はほとんどが今も「新築か中古か」の2つだけでしょう。
以前から中古住宅の売買とリフォームの相性は良いとされ、不動産仲介会社が自らリフォーム業も行っているケースが増えている様に思いますが、ほとんどが仲介した住まいの古い設備を交換したり内装を更新する程度で、リノベーションする事を前提に中古住宅を販売するには至っていないのではないでしょうか。
中古住宅のリノベーション事業が成長するための課題
古くて汚いものを見栄え良く隠してしまう印象の強い再販住宅と異なり、中古住宅を自分達の暮らしにあわせてリノベーションするのは、工事の過程もわかるので個人的にはお奨めです。
しかしリノベーション済の物件を再販するのと違って、販売業者が「古くて汚くなった中古住宅をリノベーションしたらこんなに綺麗で快適になります。」とイメージしてもらえる提案やプレゼンが上手にできないのが大きなネックになっている様に思います。
またリノベーションで価値を高めたいと思ったら、既存の状態をよく調査し、問題点を洗い出すインスペクションも欠かせません。
中古住宅のリノベーション事業者には、建物調査、リノベーション提案、不動産売買、住宅ローン等の知識を持った人材がまだまだ不足しているのが現状です。
中古住宅を購入する人に対して、老朽化している部分や壊れている部分のリフォームを奨めるだけの従来のやり方では、中古住宅流通の活性化はあまり期待できません。
今後中古住宅の売買とリノベーション事業を行う会社には、この様な課題を解決し、需要を拡大していくための具体的な戦略・戦術が求められます。
ホームインスペクションの活用やバーチャルリアリティーでリノベーションの提案をするなど、「中古住宅+リノベーション」の魅力を十分に伝えて欲しいと思います。
鉄骨造住宅のリノベーション現場(解体後)