建設現場の現場所長の悩みが、一昔前までは、「利益確保」や「事故が発生した時の責任の重さ」、「書類の多さ」などだったのに対し、近年では「休日取得や閉所日の増加を求められる」、「ICTの活用や時短を求められる」、「若手の育成が難しい」などの悩みが大きくなっているといいます。
かつての建設現場には、「残業、休日出勤は当たり前」、「入社後数年間は修業期間なのだから、辛くても辛抱して仕事を覚えなければ、この業界では生き残れない」といった風潮がありました。
そうした厳しい環境の中で、厳しい指導を受けながら頑張った人だけが、一人前の建築技術者と認められると皆が思っていました。
休日を確保しながら工期を守り、かつ若手社員を一人前の建築技術者に育てるのは、口で言うほど簡単ではありません。(プライベートを充実させながら楽して仕事を覚える事ができれば理想ですが、そんなに甘くはないのがこの業界です)
「働き方改革」が叫ばれるご時世の中で、建築技術者の人材育成が今後の建設業界の大きな課題となりそうです。
さて、一般的にオフィスの賃貸契約を解約して退去する際には、借主には原状回復を行う義務があり、その費用は借主が負担します。
しかし、原状回復の範囲や工事内容をめぐって、トラブルになるケースは少なくありません。
原状回復とは国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
よって、あくまでも借主側の問題によって生じた損耗や毀損を借りた時点の状態に戻すことをいいます。
間仕切り壁の変更や撤去、設備の増設などを行った場合に、それらを元の状態に戻すのが原状回復で、使用していなくても自然に経年劣化するものは、これには当然含まれません。
また、通常使用による損耗の修繕は賃料で賄うべきという考え方です。
しかし、通常の使用による壁紙や床材の日焼けや汚れ、設備の経年劣化等の修繕費用まで、借主の負担とするようなケースも散見します。
また、天井や壁の修繕が必要な場合でも、部分的な修繕を行えば済むのに、全面的な修繕を求められるケースもあります。
しかし賃貸借契約書に「借主が通常の損耗の修繕費用も負担する」などといった特約がある場合もあるので、契約する際には十分注意する必要があります。
トラブルを未然に防ぐには、入居時に契約書と建物の損耗状態を良く確認して記録に残しておく事!
このように原状回復をめぐるトラブルの多くは、入居時及び退去時における損耗等の有無などの物件確認不足や、契約内容の確認不足が原因です。
入居時の契約の際に、退去時の事まで想定して契約書をチェックしたり、入居時の状態を写真等の記録に残しておくのは、手間がかかるので省略しがちですが、当事者間の認識の差を少なくして、後日トラブルになるのを避けるためには必要な事です。
また、万が一訴訟等に発展した場合にも証拠資料となるので、原状回復工事で損をしたくなければ、こうした手間を惜しんではいけません。
原状回復工事は退去日までに終了する必要があるため、時間的余裕がないのが普通ですが、業者から提出された見積書が予想以上に高額だったら、まずは工事範囲を疑ってみる必要があります。
数十万円単位で、原状回復工事の範囲を超えた工事が見積書に含まれていることも、決して珍しくありません。
しかし、貸主や業者と交渉するのも簡単ではありません。
そのような時には、専門家に相談するのも一つの方法ですが、期限のあるものなので、相談は早めにした方が良いのはいうまでもありません。
オフィス物件では、上の写真の様な状態で募集をかけている事が多い
退去の際にはこの状態まで復旧する必要がある