住宅会社を退職して以来、アウトプットの機会ばかりが増えてしまい、インプットの機会がなかなかないので、最新の住宅事情や法令改正、新工法、業界動向などの情報収集のため、日経ホームビルダーなどの業界専門誌を定期購読しています。
今月の日経ホームビルダーの中に、興味深い記事がありました。
住宅会社は、完成時に建て主が求める「手直し工事」にどこまで応じるべきかといった内容です。
手直し工事とは、竣工時に建て主から要望されて実施する補修工事のことで、「ダメ工事」とも呼ばれています。
ダメ工事は大きく分けると3つに分類されます。
➀法令違反や基準の未達 安全上の欠陥や住宅性能不足などの重大欠陥につながる可能性大
➁設計図書との不一致 契約違反となる恐れあり
➂傷や汚れなどの美観上の問題 数万円で補修できるケースがほとんどだが、発生率が高い
➀、➁に該当する場合は、当然補修しなければ完成とは認めてもらえないため、ほとんどの住宅会社が手直し工事に応じていると思います。
金額の多寡によらず補修しなければならないのは明白です。
ただし、補修方法によって補修費用が大きく異なることが多いので、「どの様に補修するのか」、「補修でなく、工事のやり直しが必要なのか」などが問題になるケースがあります。
美観上の傷は軽視できない!
一方、現場で頻繁にトラブルになるのは、床や建具の傷などの美観上の問題で、ダメ工事のほとんどがこれに該当します。
傷や汚れに関しては、建築関係法規等に明確な基準があるわけでもなく、建て主によって要求度が異なると共に、住宅会社も明確な基準を設けていることが少ないので、建て主と現場担当者の主観による判断になっているケースがほとんどです。
また、単なる補修では建て主に納得してもらえず、交換を要求されることもあります。
住宅会社にとっては無償での対応になるだけに、建て主の要求を全て受け入れていると補修費がかさみ、利益を圧迫することになってしまいます。
「建て主からの補修要望にどこまで応じるか」という住宅会社へのアンケートの結果を見ると、補修内容や瑕疵の度合いによる(64.8%)としながらも、10万円以下と回答したものが最も多く(21.5%)なっています。
記事では、ユニットバスの傷が原因で2度ユニットバス交換を行ったほか、内装の貼り換えやカーポートの無償設置など、際限のない顧客からのクレームに疲れ果てた住宅会社の様子が書かれていました。
最終的には弁護士が間に入って解決した様です。
ここまでのケースは稀だとしても、実際に私も住宅会社に勤務している頃には、似たようなトラブルを経験しました。
また現在も建て主側からの相談を受ける中で、「住宅会社にどこまで手直し工事を要求できるのか」といった相談を受けることが時々あります。
ダメ工事を巡って住宅会社とトラブルになると、訴訟に発展するケースもあります。
住宅会社の中には、あらかじめ補修費用を予算に計上するなどの対策をとっている例も増えている様ですが、住宅会社にまず求められることは、現場の養生や清掃・片付け、工程管理を徹底し、傷をつけない様に管理を徹底することです。
管理不徹底で傷が付いてしまった場合は、いい訳できません。
2年後に施行が迫る改正民法では修補請求にともなう扱い方が変わるので、住宅会社は今からダメ工事を出さないための対策を整えておく必要があります。