中古住宅のホームインスペクションを行っていると、時々屋根や雨樋が破損していることがあります。
そんな状況を目にすると、「火災保険を利用してタダで修理できたのに・・・。」と残念に思います。
台風などで破損した屋根や雨樋を修理する際に、火災保険を使えば無料で修理できる可能性があることを知らない方が意外と多い様です。
現在、ほとんどの方が火災保険に加入していると思いますが、火災保険の対象は火災による損害だけではありません。
補償の対象は火災保険の商品により異なりますが、住宅を対象とする一般的な火災保険では、台風で瓦が飛んでしまった場合や飛来物により屋根が破損した場合などの「風災による損害」は補償対象になります。
一度ご自身の火災保険の補償内容がどの様になっているのか、契約内容をきちんと見直しておくことをお勧めします。
・「風災」だと認められること(経年劣化や地震によるものではないこと)
・屋根や雨樋の修理が必要になってから3年以内であること(実際には被害が発生した日時を断定するのは難しいので、あまり気にする必要はありません)
・屋根や雨樋の修理費用が20万円以上であること(保険会社によって20万円未満だと補償されないことがあるので注意が必要です)
・自分自身で申請を行うこと
これらの全ての条件を満たす場合には、火災保険会社から保険金を受け取ることができます。
また屋根や雨樋の修理だけの費用では20万円に満たない場合でも、復旧工事を行う前のブルーシート掛けなどの応急処置費用や屋根や雨樋の修理に必要な足場代も保険の対象になるので、これらを含めると火災保険の適用条件に入ることがほとんどです。
屋根の風災被害の対象には他に
・棟板金の浮きや飛散
・板金屋根のめくれ
・釘やビスなどの浮き
・瓦のズレ、割れ
・漆喰の崩れ
・軒天や破風板の剥がれ
・漏水
などがあります。
ここで風災被害によるものと経年劣化によるものとの区別が非常にグレーゾーンになるケースがありますが、比較的築年数が浅い場合や、台風の直後の場合には「風災」として認められやすくなります。
火災保険を利用した屋根修理のトラブルや詐欺に注意!
一方、火災保険を利用した屋根修理に関するトラブルや詐欺被害が全国的に発生しているので注意が必要です。
「火災保険を使えばタダで屋根のリフォームができる」と称して屋根の葺き替えなどの保険適用外の工事を契約させられたり、申請を代行するといって法外な手数料(保険金の50%程度)を請求されたりする事例が数多く発生しています。
保険金は申請すれば絶対にもらえるとは限らない(申請内容や金額により、保険会社の鑑定人による調査が行われます)ので、このような悪質な業者の話を鵜呑みにしてはいけません。
近年は、昨年関東地方を襲った大型台風の様に風災被害が拡大しているため、火災保険料は値上がりの傾向にあります。
せっかく毎年高い保険料を払っているのであれば、有効に活用したいものです。
まずは信頼できる業者に相談することが大切ですが、そもそも自分の家の屋根がどの様な状態になっているのかなかなかわからないものです。
下で紹介している事例は、売買の際の住宅診断で発覚した事例ですが、売主様は気付いていませんでした。
定期的に建物診断を行って専門家のアドバイスを受けていれば、売りに出す前に保険金で修理できた可能性が高かったと思います。
したがって、大型台風の到来直後などに中立的立場の専門家による住宅診断を行っておくと安心です。
弊社では火災保険の代理申請や工事は行っておりませんが、必要に応じて保険の申請に必要な報告書を作成いたします。
【火災保険が利用できたと思われる屋根の風害被害事例】
瓦の破損(飛来物によるものと思われる)
板金屋根の釘の浮き(強風によるものと思われる)