耐震性能を表す指標

建物の耐震性能を表す指標の中で一般的に使われるのが、2000年に施行された品確法の住宅性能表示制度にある耐震等級でしょう。地震に対する強さが壁の量や配置などによって評価されます。
1~3の3段階の指標で、耐震等級1が建築基準法の規定を満たしている建物で、数百年に1度程度発生する震度6~7程度の地震に対して倒壊・崩壊しない事が求められています。
そして、耐震等級2は建築基準法の1.25倍、耐震等級3では建築基準法の1.5倍の強さが求められます。
多くの建物が倒壊した熊本地震以来、新築する際には耐震等級3で建築する事が推奨される様になってきています。

しかし既存住宅で、新築時に建設住宅性能評価書が交付されていない場合は、耐震等級がわかりません。
耐震性能が知りたい場合は、耐震診断を受けるのが一般的になっています。

耐震診断の結果を表す「Iw値」とは?

耐震診断の結果を表す数値には「Iw値」が用いられます。
Iw値とは「地震に対してどれ位の強さを持っているか」を示すもので、簡単に言えば各階の必要保有耐力に対する各階の保有耐力の割合で計算されます。
Iw値1.0以上で大地震(震度6強程度)に対して倒壊・崩壊する可能性が低い、Iw値0.7以上1.0未満で大地震に対して倒壊・崩壊する可能性がある、Iw値0.7未満の場合は大地震に対して倒壊・崩壊する可能性が高いとなっています。
このようにIw値は数字が大きいほど地震に抵抗する力が強い事を示していて、2.0近くになる事もあります。
耐震改修工事では、Iw値を1.0以上にする事が要求されます。
しかし、1.0以上でも大地震で倒壊しないと言っている訳ではないので、注意が必要です。

尚、建防協(日本建築防災協会)では、住宅の延床面積と耐震改修前後の住宅の評点差から、次の式で耐震改修工事にかかるおおよその費用が算出できるとしています。
耐震改修工事費=27,000円/㎡×(耐震改修後の評点-耐震改修前の評点)×延床面積

この計算だと、私の経験では少し乱暴すぎる気がしますが、あくまでも費用の目安として参考にする分には良いと思います。

耐震診断・耐震改修に対して費用の一部を補助する支援制度を設けている自治体では、補助金支給の条件として、既存のIw値が定められた値以下だったり、改修後のIw値が基準の値以上となる事を求められる事が多いので、補助金を受けようとする場合には、改修工事前に確認が必要です。

この様に建物の耐震性能を表す指標は複数あるので、混同しない様にしましょう。

taisin[1]

「制震構造だから安心」とはいえない!

そして注意したい点があと一つ。
最近の住宅では、「制震構造」であることで建物の安全性を大きくアピールしている住宅をよく目にしますが、制震装置は建物の耐震性能が高い事ではじめて効果を発揮するものです。耐震診断の結果、耐震基準ギリギリの数値しかない建物では、大きな地震に耐えられない可能性もあります。耐震性能の低い中古住宅に制振装置だけ設置しても、あまり効果は期待できないので、十分注意して欲しいと思います。
リフォームで耐震性を向上させたい場合にも制振装置を設置する前に、まずはIw値を上げる事が重要です。

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