鉄筋コンクリート住宅の重大な欠陥

新型コロナウイルスの影響で、今後日本人の働き方が大きく変わるといわれる様になりました。
在宅ワークが増えると自宅で過ごす時間が増えるため、住まいの役割も今までとは変わってくると思います。
マイホームをワークスペースとして利用するためにリフォームする人や、地方に移住する人が今後少しづつ増えるかもしれません。

さて、先月は久しぶりに鉄筋コンクリート造中古住宅のホームインスペクションを行いました。
物件の購入を検討している方から契約前に建物調査を依頼されたものです。
鉄筋コンクリート造の建物は、新耐震基準に適合していれば構造面での不安が少ないためか、購入前にホームインスペクションを依頼する方はそんなに多くありません。

鉄筋コンクリート造の建物は他の構造の建物と比較して耐用年数が長く、耐震性が高いことが最大の長所ですが、施工に不具合があると強度が著しく低下してしまいます。
また、木造住宅の様に簡単に補強することができないので、鉄筋コンクリート造の中古住宅を購入する際には、構造躯体の状態の見極めが重要になります。

コンクリートの施工不良にはコールドジョイント(コンクリートを打ちこむ時間の間隔が不適切な場合に発生)や乾燥収縮によるひび割れ(水分量の多い柔らかい生コンを採用すると発生しやすい)、砂すじ(型枠の継ぎ目からセメントペーストが漏れ出して発生)などがありますが、最も代表的なものがジャンカです。

ジャンカとは豆板(まめいた)ともいわれ、打設されたコンクリートの一部にできた空隙の多い不良部分をいいます。
RIMG5818
打ちっ放しコンクリートの壁面に発生しているジャンカ(豆板)。部分的に補修されていたが、一部は砂利が露出したままの状態。

ジャンカが生じた部分は非常に見た目が悪くなるばかりでなく、コンクリート強度の低下や、水や空気が侵入するため中性化や塩害に対する抵抗力が低下し、鉄筋の腐食が早まってしまいます。

ジャンカの原因は、コンクリートの締固め不足や打ち込み高さが高いために材料が分離するなどの施工不良がほとんどです。
ポリマーセメントや無収縮モルタルなどで補修することが可能ですが、長年放置してあると、中の鉄筋が腐食してしまっている可能性があります。

またごくまれに、コンクリートの中に木片やプラスチック、木くず、空き缶などの異物が混入しているケースもあります。(下写真)
RIMG5804

この様なケースでは、施工中の品質管理が疎かだった可能性が高いので、注意が必要です。

再販業者のリノベーション住宅には注意が必要!

この物件には他にも雨漏りの形跡が多数あり(取引条件は現況有姿渡し)、きちんと改善するには根本的な原因を取り除かなければならないので、そのためには大掛かりな改修工事が必要になると判断しました。
鉄筋コンクリート造の建物は屋根が陸屋根(平らな屋根)なので、木造住宅よりも雨漏りしやすいという欠点があります。
また、木造住宅よりも耐久性が高いというイメージがあるからなのか、メンテナンスを怠りやすい傾向があります。
今回の建物も例外ではなく、建築後のメンテナンスがほとんど行われていない上に、設計上の問題点も数多く見受けられました。

結果的には依頼者は購入を断念することになってしまいましたが、もし購入した場合には建物の大きさを考えると、購入後に1,000万円を超える修繕費用が必要になったと思います。

当日は、他にも購入希望の方が複数(いずれも再販業者と思われます)内覧に訪れていました。
表面上だけ綺麗にリノベーションするだけであれば、500万円以内でも可能でしょう。
物件価格が格安だったため、見た目だけ綺麗にお化粧して再販されることになるのかもしれません。
しかしそんな住宅を購入してしまった人は、入居後に大きな後悔をすることになってしまいかねません。
実は中古住宅市場ではそのような住宅に時々出会うので、注意が必要です。

近年ではリノベーション済中古マンションの再販物件が非常に多く市場に出まわる様になりました。
鉄筋コンクリート造の戸建、マンションのリノベーションは構造補強などが絡まないので、建築スキルが低い業者でも比較的手を付けやすいといえます。
したがってリノベーション済物件は見た目はほとんど同じ様に見えても、配管交換や断熱改修などきちんとリノベーションされた物件もあれば、隠れた部分や構造躯体、防火上の処置などに数多くの欠陥を抱えたままの物件まで千差万別です。
リノベーション済再販物件を購入する場合には、建築スキルが高い信頼できるリフォーム業者がリノベーションを行った物件を購入することが大切です。

千葉市のホームインスペクション専門会社匠住宅診断サービスTopへ戻る