不足する建築技術者

気象庁の発表によると、大型の台風10号が週明けに本州接近のおそれがあるといいます。
関東でも多くの被害をもたらした先日の台風よりも強いという事なので、暴風雨に対して十分な注意が必要です。

さて、今までに建設業界や住宅業界の問題点や、欠陥住宅が生まれる背景などをいろいろとお話ししてきました。
しかし、この業界には他にもまだ大きな課題があります。

建設業界は、私がこの業界に入って以来、常に人材不足の状態にありました。隆盛期だったバブル期だけでなく、市場が大幅に縮小した近年でも人材不足は続いています。建設業に従事する人が減っているためです。これは現場の職人だけでなく、現場監督などの建築技術者も同様です。
人材が不足する一方で、建築現場では法改正への対応やコンプライアンス遵守が厳しくなる中、各種申請書類や管理書類、作業日報、報告書作成などの事務作業も増え、現場監督が現場にいる時間はますます減る一方です。
現場監督一人あたりの生産性は年々減少する傾向にあります。
また、新卒社員をいくら採用しても、一人前の技術者になるためには時間がかかります。
ビル建築などの少し大きな現場を任せられる様になるには、10年位はかかってしまうのです。

人材不足を補う方法としては、派遣会社から建築技術者を派遣してもらい、一時的に補うしかありません。
私がいた会社でも、たくさんの派遣の現場監督がいました。
これは大きな現場に限ったことではなく、住宅の現場やリフォームの現場でも一時期派遣社員に頼っていた事もあります。
また、現場監督だけでなく、設計担当者やCADオペレーターなどの派遣社員もいました。

派遣監督の問題点

では派遣社員がなぜ問題なのでしょうか?

私は、派遣社員自体を認めていないわけでは決してありません。
派遣会社に登録しているのは、独立開業や会社の倒産、リストラ、家庭の事情などの理由で、一度職を離れてはいるものの、それなりの実績を積んだ人達です。私も派遣社員の採用に関わった経験がありますし、私自身がこの先派遣会社に登録する事になるかもしれません。
派遣監督の中には、もちろん経験豊富で優秀な現場監督もいると思います。元はゼネコンの正社員として現場所長を務めていた人などもいるでしょう。
しかし、その人が優秀かどうかはすぐにはわかりません。建設業における現場監督の評価は、施工品質など建物が完成するまでわからない事がたくさんあります。また場合によっては、完成後数年経って初めて評価できる事もあるのです。
一方、建設会社が派遣監督を採用するのは、即戦力として期待するものなので、毎日誰かが監視していたのでは意味がありません。
ある程度任せるしかないので、建物の品質は派遣監督個人の力量に大きく左右されてしまいます。
建物完成後の事まで考えて、工事管理をしてくれるかどうかもわかりません。

また建設会社には、一定の品質を確保するために、それぞれの会社特有の施工基準や作業規準などがある他、企業風土や行動指針、社是などもあります。しかし、契約期限を決められ、業務範囲が限定された派遣監督にそれらの事を教える動機もありません。
派遣監督のモチベーション自体も、社員の現場監督と同じものを求める事はできないでしょう。

だからと言って、派遣監督が現場管理を行った建物の品質に問題があるとは限りません。
しかし、現場でのコミュニケーション不足やモラルの低下、責任の所在の不明確さなどの懸念があり、不安要素のひとつになる事は間違いありません。
上手くいくかどうかは運しだいという面は否定できないのです。

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