住宅業界の特異性

私は学生時代のアルバイトをはじめ社会人になってからもずっと住宅業界に身を置いている為、他の業界はあまり知らないのですが、住宅業界は他の業界と比べてかなり特異な業界ではないかと思っています。

住宅業界には同じ住宅という数千万円から数億円にもなる高額な商品を扱っているものの、年商が1兆円、年間施工棟数が数千棟のハウスメーカーやパワービルダーもあれば、年商数千万円、施工棟数が数棟の工務店まで様々な企業があります。
そして数の上では、中小の工務店の方が圧倒的に多いのです。
時として施工棟数数千棟のハウスメーカーの住宅と、施工棟数数棟の工務店の住宅が同じ土俵の上で比較検討され、工務店の住宅が勝ってしまう事さえあります。

また建築する住宅の価格や品質にも、住宅会社によって大きな格差がある様に思います。
一般的には工業化が進んだハウスメーカーの住宅の方が高くても品質が安定していると思うのですが、本当に素晴らしいと思う住宅は、腕の良い大工が「匠の技」で木を見ながら手刻みしたものだと思います。
高性能な自動車のエンジンが機械で組み立てられるのではなく、熟練の技術者が1台ずつ手組みするのと似ています。

そして他の業界との一番の違いは、生産者と販売者が同じだという点ではないでしょうか。
野菜でも果物でも、または家電や自動車といった高額商品でも、他の業界では通常は生産者と販売者が異なります。
生産者がいくら「良い商品だ」と言っても、販売者がそう思わなければ販売してもらえません。
生産者は「商品が消費者に購入してもらえるかどうか」を考えると共に、「販売者に販売してもらえるかどうか」も考えなければなりません。
値段が高くて品質が悪くクレームの多い商品は、消費者の手に渡る前に目利きが効く販売者の厳しい目ではじかれてしまうのです。

住宅購入の際には「消費者にも学習が必要」なワケ

しかし住宅業界はどうでしょうか?
生産する住宅会社が自ら販売も行うので、専門家の厳しい目で審査される機会がほとんどないままに市場に出ていきます。
住宅業界の欠陥住宅問題は、このような特異な業界構造に原因があるのではないでしょうか。

同じ住宅業界の中でも、住宅設備機器や建材は少し事情が違います。
販売するのが住宅会社なので、製造メーカーがどんなに良い商品だと言っても、住宅会社の評価が低ければ販売されません。
それにもかかわらず住宅は生産者の好きな様に好きなだけ販売される事に問題があると思います。

また住宅は最も高額な商品なので、何度も買い替えるものではありません。
他の商品の場合はたとえ家電や自動車であっても、いつかは買い替え時期がやってきます。気に入らなければ数年で買い替える事もあるでしょう。
品質の良くない商品、アフターサービスの良くないメーカーの商品は二度と買ってもらえません。
しかし住宅の場合はほとんどが「一度売ってしまえば終わり」なのでなかなか市場の中で淘汰される事もなく、品質が悪いままでも長く売り続けられます。
そして住宅に万一大きな欠陥が見つかった場合でも、住宅は家電や自動車のような大量生産ではないので被害を受ける人も限定的になるため、新聞やテレビのニュースなどで大きく報道される事もあまりありません。

この様な事が住宅業界の「甘えの構造」の元になっていると思います。
良い住宅を手に入れるためには、他の商品を購入する時以上に消費者が学習する必要があります。

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住宅トラブルは日常茶飯事なのに多く語られる事はない・・・。

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