建築確認申請と建築現場の実態

我が国の建築基準法では、規定以上の建物を新築または増改築を行う際には、事前に役所等に建築確認申請書を提出し、
審査に合格した場合には建築確認済証が発行され、完了検査に合格すると検査済証が発行されます。
一般的には建築確認申請を受けて建築し、検査済証の交付を受けた建物は「安全」であると思われています。
不動産販売業者や仲介業者の中にも「役所の検査済証があるので、心配はない」と断言する業者もいます。
しかし、建築確認申請書や検査済証があっても決して「安心」ではないのです。

現在の建築基準法では建築確認の迅速化のため、一定規模以下の建物で建築士が設計して監理したものについては「確認の特例」があり、確認申請の審査や現場での検査が簡略化されています。
完了検査は確認申請とおりの工事が完了したかどうかの確認が目的です。
建物配置や間取り、高さ、開口部の位置や大きさ等のチェックがメインとなります。
そして木造2階建ての住宅はほとんどこれに該当します。
この結果、木造2階建て住宅の適法性や安全性の確保についての責任の多くは建築士が負う事になっています。
しかし、工事監理者である建築士が現場で検査を行い、不具合があれば施工者に是正指示を出すのはタテマエで、実態は必ずしもそうではありません。

ハウスメーカーや工務店の建築現場の実態とは?

yjimageIT6SQLCX
設計・施工を共に行うハウスメーカーや工務店等の建設会社の場合は、設計を担当する建築士はほとんど自社の社員です。
建設会社の建築士は、設計や建築確認申請の手続きは行っても、現場の工事監理に責任を持って介在する事は滅多にありません。
万一監理を行ったとしても、施工者側(建設会社)の利益に沿ったものになるのは明らかです。

また、建築確認申請の手続きを下請けの設計事務所に依頼する事も常態化しています。
建築士事務所の看板を掲げ、建築確認申請業務を主として行う「代願事務所」と呼ばれる建築設計事務所も存在します。
この場合も、設計事務所の建築士が現場の工事監理に介在することはありません。
介在したとしても建築士は発注者である建設会社の言いなりになってしまいます。

さらに悪質な例は「名義貸し」です。コスト削減のため、設計を行うのは無資格の設計者で、建築確認申請書の工事監理者
の欄に名前だけを貸して記入させるといった事も以前は多く見受けられました。
もちろん現場の工事監理を行う気ははじめからないので、現場に行く事はありません。

この様に現場では、本来工事監理者であるはずの建築士が設計監理や検査に関わる事は稀で、そのほとんどが現場監督に委ねられているのが現状なのです。現場監督が行う工事管理と設計者が行うべき工事監理が明確に分かれていないのです。
ハウスメーカーや工務店の現場監督は常に7~8棟以上担当しているのが普通ですから、十分な検査はあまり期待できません。これらの事が温床となって欠陥住宅が生まれてしまうのです。

昨今、「建築確認の特例」は廃止や見直しが検討されている様ですが、現在市場に流通している中古住宅はそのほとんどがこの様な中で建築されたものである事を知って欲しいと思います。
欠陥住宅かどうかは建築確認申請を提出して検査済証があるかどうかではなく、良識ある建設会社や現場監督、職人が施工したかどうかで決まってしまうのです。万一欠陥住宅で検査済証があったとしても、役所は何の責任もとりません。自らの責任で物件を選ぶしかないのです。
私達が中古住宅の購入を検討する際にホームインスペクションを強くお奨めする理由は、まさにここにあります。

千葉市のホームインスペクション専門会社匠住宅診断サービスTopへ戻る