家具販売大手のニトリと大塚家具が、それぞれ中古住宅販売を手掛ける会社と組んで中古住宅市場に参入します。
中古家具付リノベーション住宅の販売をするのだそうです。
今回提携するのは、大塚家具と中古マンション販売のスター・マイカ、ニトリと中古住宅販売会社カチタスです。
中古住宅や中古家具の流通がますます盛んになる良いきっかけになるかもしれません。
さて、あるデーターによると、中古物件を購入した人に物件の内覧にかけた時間を聞いたところ、売主が居住中の場合には15分程度、最大でも1時間程度という回答が多かった様です。売主に気兼ねしてしまい、内覧に十分な時間がかけられないのが現実だと思います。
我々ホームインスペクターは通常2~3時間かけて中古住宅のインスペクションを行います。一般の方が1時間程度内覧しても、せいぜい建物の表面的な傷や汚れ程度しかわからないでしょう。これで購入の可否を見極めるのは至難の業です。
一生のうちで最も高額な買い物なのに、この程度の時間で購入の判断をしなければならないのが我が国の中古住宅売買の実態です。
私にはとても理解できません。これでは契約後に後悔する事になっても不思議ではありません。
不動産仲介会社は、もっと買主が気兼ねなく物件の内覧が出来る様に、工夫や配慮をするべきだと思います。
さて、昨年6月に、宅建業法が改正されて「インスペクションの説明を義務化」する事が決定しました。
今後インスペクションをめぐって様々な動きがありそうです。
そんな中で、私が懸念しているのは「ホームインスペクターと不動産業者との癒着」です。
インスペクションの説明の義務化が実施される様になれば、インスペクションの仕事を不動産会社から紹介されるケースが増えると思います。その際、不動産業者から顧客を紹介してもらったり、不動産業者から直接発注を受ける下請け的なインスペクターは、不動産業者に対して常に弱い立場にあります。万一インスペクションの報告内容に、不動産業者にとって不都合な文面や画像があって削除を要請された場合に、どれだけのインスペクターが断る事ができるでしょうか?断れば次回から全く仕事が無くなってしまう可能性もあるのです。
こうした懸念材料をどの様に排除していくかが、ホームインスペクションが普及するための鍵になると思います。
弊社も時々不動産業者からお客様の紹介を受ける事があります。
不動産業者の中にも、「ありのままの事実を報告して欲しい」という信頼できる誠実な業者さんもいます。
既に大手不動産会社ではサービスの一環として、中古住宅の売買時に建物調査や建物補修などを取り入れています。
三井のリハウスでは、建物・設備調査を無償で行ったり、希望により専門の調査会社を紹介して既存住宅検査(税抜¥50,000~)を行い、「雨漏り、木部の腐食、シロアリの害、給排水管の故障」の有無を診断し、報告書を提出させています。
また、売却後、購入後に雨漏り、木部の腐食、シロアリ被害、給排水管の故障が発生しても、2年間は最大250万円の補修費用を負担するサービスなどもあります。(ただし、事前の既存住宅検査で、不具合が発見された項目は対象外です)
中小の不動産会社の中にも、住宅診断会社を紹介や斡旋する会社が徐々に増えている様です。
不動産会社からは、これらの独自の検査や保証がある事を理由に、「第三者によるホームインスペクションの必要はない」と言われてしまうかもしれません。しかし、対象となる項目はたった4項目で、補修費用を負担してくれるのは僅か2年間だけです。
建物の不具合には様々な種類があり、様々な場所で発生しています。不動産会社独自の基準のチェックとわずかな保証期間だけでは決して安心できるものとはいえません。
大きな不具合がなくても、気になる不具合や小さな不具合がたくさんある場合には、保証よりも購入しない事が重要になる場合もあります。
ホームインスペクターは買主自らが選ぶ事が最も重要!
不動産業者にとって第三者のホームインスペクションは決して歓迎すべきものではないでしょう。何とかホームインスペクションを行うのを阻止しようとする気持ちも理解できます。だからといって、不動産業者が自ら行うホームインスペクションや、不動産業者紹介の調査会社が行う建物診断は100%信用するには抵抗があるでしょう。
ホームインスペクションを行う上で本来重要な事は、「インスペクターは買主自らが選ぶ事」です。
しかし、安心して中古住宅の取引ができる様になる事は、最終的には不動産業者の利益に繋がるのを忘れてはいけません。
こうした現状を理解して、業界全体でホームインスペクションを普及させていく必要があると思います。
最近では安心して中古住宅を購入してもらうために、自らホームインスペクションを行い、大きな欠陥のあるものは取り扱わない不動産業者も出てきています。
中古住宅の流通を安全なものにして活性化させることは、将来的には多くの人の利益になるはずです。