マンションリフォームで見逃しがちな欠陥

都心部に建てられるタワーマンションの売れ行きが好調な様です。
一方、全国のマンションストックは約590万戸あるといわれ、マンションにも空き家の影が忍び寄っています。
特に1981年6月以前に建設された(築36年超)旧耐震マンションは106万戸も存在し、今後「貸すことも売ることもできない」まま空き家として放置されるものが増える懸念があります。

さて築年数が30年を超えるマンションでは、水回り設備の交換と同時に、給水・給湯管を交換するケースが多いと思います。
近年では給水管や給湯管には、ポリエチレン管やポリブデン管の様な樹脂管が使用されることがほとんどです。

マンションの給水・給湯管の交換工事では、水道メーターのある共用廊下に面したメータボックスから室内に新しい配管を引き込みます。

各住戸のメーターが格納されているとはいえここは共用部分になり、防火区画されています。
防火区画とは、火災発生時に火炎が一気に燃え広がるのを防ぐために、一定の面積ごとに区画しているものです。
したがってこの区画の壁や床を配管が貫通する場合には、容易に燃えない様にしなければなりません。

防火区画を貫通する配管の施工に注意! 中には無知なリフォーム業者も・・・。

配管貫通部分の周囲は隙間のない様にモルタルや耐火パテなどでふさぎ、貫通部には法令で規定された仕様、もしくは性能基準を満たしたものとして認められた構造方法を用いなければなりません。
具体的には、貫通部分からそれぞれ両側1m以内の部分を不燃材料にするなどです。
しかし樹脂管は不燃材料ではないので、貫通部は防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものとしなければいけません。

国土交通大臣認定を取得した防火区画の貫通処理材として、積水化学工業の「フィブロック」や古河電工「イチジカン-HOLD」などがあります。
いずれも万一火災が発生した場合に、貫通処理材に熱が伝わって膨張し、貫通部を閉塞して煙や延焼を遅らせるという構造です。

新たに樹脂管を使用する場合には、防火区画の配管貫通部分には本来この様な法令に準じた処置が必要なのですが、未施工の事例が時々あります。
リフォーム会社がこうしたことを知らなかったり、設備業者が忘れてしまうことも決して珍しくありません。

法令に準じた規定を満たした認定品を使用して正しく施工することが、マンション居住者全員の安全と建物全体の資産価値の維持につながります。

マンションは区分所有者全員の共有財産なので、専有部分のリフォーム工事の際にはリフォーム会社のモラルや品質管理能力が問われます。
配管の防火区画貫通部に適切な処理を行ったかどうかをリフォーム会社に確認し、施工に不備がある場合には、必ず是正を要求する様にしてください。
wakuwaku-hiroba_10001389_2[1]イチジカン-HOLDの施工方法
yjimage[2]
イチジカン―HOLD  古河電工

千葉市のホームインスペクション専門会社匠住宅診断サービスTopへ戻る