住宅を建築する際には、様々な手順が必要になります。通常、初めに住宅雑誌やインターネットなどで情報を収集し、気になる住宅会社のモデルハウスを見学します。すると営業マンからのアプローチがあり、各種プレゼンを受けながら会社を選定して、契約へと進み、仕様打ち合わせ、追加工事契約、地鎮祭、着工、上棟、完成、引き渡しとなります。
それぞれの段階で注意すべき点や失敗例、その対策などをご紹介していきたいと思います。
契約までの失敗例とその対策
住宅会社のモデルハウスやイベントなどに参加してアンケートに記入すると、その日からあなたは見込み客として住宅会社の顧客リストに登録されます。さっそく営業マンからアプローチがあり、すぐに営業マンの訪問を受けるでしょう。
営業マンとは引き渡しまでの長い付き合いになります。ストレスなく楽しく住まいづくりを進めていく上で、営業マンとの相性は非常に重要です。万一営業マンに不満があるようであれば、できるだけ早い時期に住宅会社に対して営業マンの変更を申し出ましょう。つい相手に遠慮してしまい、最後まで気の合わない営業マンを相手にすることになって、気疲れのため体調を崩してしまったという失敗談も少なくありません。
営業マンからは、初めに敷地調査を進められます。これをきっかけにどんどん人間関係を構築していくのが住宅営業マンの手法です。また、優秀な営業マンほど次回のアポイントをしっかりと取り、いつのまにか営業マンのペースで話が進んでいきます。
(しかし優秀な営業マンが必ずしも顧客満足度の高い営業マンという訳ではありません。)
この間、設計担当者や上司の同行を交えながら、プランや見積書が出揃うといよいよ契約のためのクロージング営業です。最初にモデルハウスを見学したのが月初なら、デキる営業マンなら月末にはクロージングを目指します。
ここで注意したいのは、プランは希望通りのものになっているかどうか、見積書には別途工事がないかという点です。
契約までの期間が短い場合、設計担当者は会社(営業や上司)の命令で無理をしがちです。特にフリープランの注文住宅では、必ずといっていいほど設計ミスや図面の記入漏れがあります。図面チェックもほとんど行われていないので当然です。
住宅会社の多くでは、社内での立場は営業部署が優先されています。営業が無理な要求を言っても、設計部署は従うしかないのです。
またその様な状態では、見積書も完璧なものになっているはずがありません。
そのまま契約になれば、後から追加工事がたくさん発生してしまいます。
「プランは契約後にも変更できるので、後でじっくり検討しましょう。」などという営業マンの言葉を信用してはダメです。
確かに変更する事はできますが、当然見積金額も変わります。契約時の見積金額が次第にうやむやになってしまうのが目に見えています。
また、「今月契約すれば〇〇%引き」や「ただ今〇〇キャンペーン実施中」などのセールストークに乗せられて、契約を急いでしまうのもいけません。ほとんどの住宅会社では、一年中何らかのキャンペーンを実施していますし、翌月になったら全く値引きしないなど、条件が極端に変わってしまう事はほとんどありません。
ただひとつ例外なのが、決算月の契約です。営業マンや営業所の査定や評価、会社の業績計上などの関係上、期内に業績を発生させたい場合には、必死の営業でクロージングをかけます。この時ばかりは通常ではありえない条件を提示される事もありますが、契約する場合には、かなりリスクの高い契約になる事を覚悟しなければなりません。
特に地盤調査が行われていない、敷地調査が不十分など不確定要素が多い中で契約を行うと、後で大きな出費となる可能性が高いので要注意です。建て替えの場合でも、契約前の地盤調査は行っておきたいものです。
いずれにしても、1か月程度の期間で注文住宅のプランや見積書を完璧にまとめるのは無理だと思った方が良いでしょう。
営業マンの営業トークに乗せられない様に注意しましょう。
以前は、ラフプランと概算見積書で請負契約の前に設計契約を締結する住宅会社が多かったのですが、この方法は住宅会社のメリットが大きい割に、建築主のメリットはあまりありません。そして請負契約時になると金額が大幅に変わる可能性大です。
設計契約を行う場合は、設計契約するメリットを説明してもらう様にしましょう。
そして契約前に必ずやっておきたい事がもうひとつ。
契約書には見積書や、図面・仕様書などの設計図書のほか、建築工事請負契約約款が添付されます。
(契約までの期間が短いとの理由で、見積の内訳書や設計図書の添付のない契約書では、どんな理由でも絶対に契約してはいけません。)
約款は難しい表現で書かれているため、面倒なので読まないで契約してしまう方が多いのですが、後々問題になりそうな事も数多く書かれているので、必ず読んで内容を理解した上で契約する事が必要です。できれば契約する前日までに、営業担当者から説明を受け、了承できない部分については、書面にて別途取り決めをしておく事も必要です。
住宅会社の中にも、請負契約約款の内容を把握していない営業マンもいるので、事前に説明を受けておく事はトラブルを防止する上でも重要です。
以上が契約までに注意する点ですが、たくさんの住宅のクレームやトラブルの中で、約半数近くが契約時点ですでに問題だった様に思います。住宅会社からあれやこれやと契約を急がされ、冷静になってじっくりと内容を検討する事ができなかった事が原因です。
また、設計ミスや見積ミスなどがあっても、素人目にはほとんど気が付かないのが普通です。
無理なスケジュールでどうしても進める必要がある場合には、専門家に第三者チェックを依頼するなど、慎重に進めたいものです。
工事請負契約約款