なぜ空き家が放置されてしまうのか?

本日で空き家問題のラストです。

さて今や地方のみでなく、都市部でも社会問題になりつつある空き家の増加。
なぜ空き家が放置されてしまうのか、空き家所有者の立場で考えてみたいと思います。

空き家が放置される理由には
1、所有者が入院、長期療養などで長期間家を空けている。
2、所有者が高齢者で現在は老人福祉施設などに住んでいるが、高齢のため判断能力が十分でない。
3、既に相続されているが共有持分となっていて、所有者間の合意に時間がかかっている。
4、現在別の家に住んでいるが解体する費用がない。  
5、不動産価格が下がっている時期に売却して損したくない、今すぐに売却する理由がない。   などです。

1についてはやむを得ないとしても、2,3の場合は少し厄介です。
高齢で判断能力が十分でないために成年後見人をたてる場合でも、空き家の売却には家庭裁判所の許可が必要だったり、相続に関わる揉め事は簡単には解決しない事が多いためです。
しかし、空き家を放置する事によって生じる問題は今まで伝えてきた通りです。

放置空き家の所有者は、空き家の弊害を自覚していない?

この様に空き家が放置される背景には様々な理由があると思いますが、他の大きな要因としては空き家の所有者が「地域や近隣に対して特別迷惑を掛けている」という自覚がない事もあるはずです。
特に実家を相続したが自分は遠く離れた場所に住んでいる場合などは、相続した家の事など忘れてしまいがちです。
4、5の場合でも地域や近隣への配慮があれば、もっと積極的に対策を考える様になるでしょう。
空き家の放置問題を解決するためには、行政はただ強制執行を行って解体するだけでなく、「放置しておく事によって生じる様々な問題をもっと幅広く知ってもらう」努力が必要だと思います。

また建物を解体して更地にしても問題が解決するわけではありません。
せっかく近所に迷惑をかけない様に解体費用を負担して更地にしたのに、土地を所有している限りはそれまでの6倍の固定資産税を払い続けなければいけません。
以前は15万円だった固定資産税が90万円になるのではわざわざ費用をかけて解体する気にはなりません。
これが危険な空き家が増える大きな原因だと思われるのですが、現在のところでは建物ができるだけ良い状態にあるうちにそれを必要とする人を探し出して有効活用してもらう事位しか有効な対策がないのが現実です。

一方、野村総合研究所が2016年6月に発表した予測によると、2033年には空き家は約2150万戸に達し、空き家率は30.2%にまで上昇するといいます。
約3軒に1軒が空き家になってしまうので、大変な問題です。
空き家は大きな社会問題といいながら国は依然として新築ばかりを優遇し、相変わらず新築住宅が増え続けているのは矛盾だらけです。
人口は減る一方なので、これでは空き家を減らすどころか国や住宅会社が空き家を増やす後押しをしている様なものです。

住宅が民間によって供給される我が国において、国が政策的に新築を抑制するのが不可能ならば、本来住宅会社こそが「空き家問題」に真剣に取り組まなければいけないはずです。
地域貢献のための施設への転用、市街地再開発の手法の応用など空き家の不動産価値を創出する方法を本気で考える時期に来ています。
住宅会社やデベロッパーが今までの様に自分達の利益ばかりを優先して、新築住宅を販売する事しか考えなければ、空き家問題は一向に解決する見込みはないでしょう。

akiya
雑草が鬱蒼と茂った空き家は、知らない人が侵入してもわかりません

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