中古マンションを購入しようとする際に、耐震性や劣化状況、不具合の有無などが気になるという方は多いのではないでしょうか。
それらの不安を解消するために、近年では契約前に専門家に依頼して建物診断を行うことが少しずつ浸透する様になってきたのは、非常に良いことだと思います。
一方、つい忘れがちなのが修繕積立金に関することです。
これからマンションを購入しようと思われている皆様は、購入予定のマンションの修繕積立金の額をご存知ですか?
そして修繕積立金は、安ければ安いほど良いと思っていませんか?
マンションの資産価値を長く維持し、住民が快適に暮らしていくためには、計画的な大規模修繕が欠かせません。
マンションでは計画的な修繕に備えて、区分所有者から毎月修繕費を徴収し、積み立てています。
しかし、現在多くのマンションで修繕積立金が不足していることをご存知でしょうか?
マンションの修繕積立金の額は分譲時には低めに設定されている事が多く、それに加えて昨今の建設費の高騰などにより、潜在的な赤字に悩まされているマンションがたくさんあります。
修繕積立金が不足すれば必要な修繕を行う事ができないので、大規模修繕を行う際には各戸から一時金を臨時徴収したり、管理組合で融資を受けて全区分所有者で毎月返済していくことになります。
この様な想定外の出費を防ぐためにも、購入予定のマンションの修繕積立金の額と現在の積立金の額には注意をしなければなりません。
適正なマンションの修繕積立金の額とは?
それではマンションの修繕積立金は、どれくらいの額が適正なのでしょうか。
マンションの修繕積立金は古いマンションほど高く、築浅になるにつれて安くなる傾向がありますが、これは年数が経過しているマンションほど修繕積立金の値上げを行っているためと考えられます。
国土交通省が発行しているマンション総合調査の平成25年のデータでは、昭和44年以前に完成したマンションの専有面積1㎡あたりの修繕積立金の月相場が253円なのに対し、平成22年以降に完成したマンションでは132円になっています。
また、マンションの所帯数によってもバラツキが見られますが、全体として修繕積立金の相場は専有面積1㎡あたり149円/月になっている様です。
もちろんエレベーターや機械式駐車場、便利な共用施設が多いほど、修繕積立金の額は高額になります。
一方修繕積立金の適正額は、国土交通省発行の「マンション修繕積立金に関するガイドライン」によると、おおむね1㎡あたり200円/月(機械式駐車場のメンテナンス代別途)が妥当といえます。
※専有面積70㎡の場合14,000円/月
したがって現在の修繕積立金の額が相場の場合、専有面積1㎡あたり51円/月不足していることになります。(専有面積70㎡の場合、年間で42,840円が不足します)
マンションの大規模修繕は12~15年ごとに行われるのが一般的なので、これでは大規模修繕実施時には50万円以上不足してしまう計算です。
修繕積立金の額が安いマンションには注意が必要!
今回お伝えしたいのは、中古マンション購入の際には必ず修繕積立金の額を確認し、専有面積1㎡あたり200円以下になっている場合には、将来的には修繕費の大幅値上げや一時金を徴収される可能性が高いということです。
不動産仲介業者の営業マンの中には、修繕積立金の安さをセールストークにしているケースを時々見かけますが、これは全く見当違いといえます。
つい営業マンの言葉にのせられて修繕積立金の安さに魅かれて購入してしまうケースも見られますが、修繕積立金が安いほどリスクが高くなることを十分に認識した上で、物件購入を検討することが重要です。
特に築浅のタワーマンションや豪華な設備がある大規模マンションで修繕積立金が安い場合は、十分に注意する必要があります。
中古マンションの購入を検討する際には、修繕積立金の額が適正な金額になっているかどうかを必ず確認しましょう。
マンションでは12~15年ごとに大規模修繕工事をおこないますが、昨今では修繕積立金不足で悩んでいるマンションが増えています