先週末に古民家鑑定士の更新講習に参加してきました。
資格者の資質の確保、知識の向上を図るための3年ごとの更新では講習を受講しなければいけません。
ところで皆さんは古民家鑑定士という資格があるのをご存知でしょうか?
住宅のホームインスペクションを実施する専門家や団体は数多く存在しますが、それはほとんどが在来工法や2×4工法などの木造住宅や鉄骨造、鉄筋コンクリート造の住宅を対象にしていて、伝統工法で建てられた古民家を対象とする専門家は少ないと思います。
古民家は建築基準法ができる前からあった伝統工法で建築されている事が多く、また伝統工法は建築基準法に規定が定められていない工法です。
大学の建築学科や建築系の専門学校などでも伝統工法を学ぶ機会はあまりないので、建築士でも伝統工法に詳しい人は多くありません。
そのため各地域の古民家再生協会では、伝統工法でも一定の耐震性の評価が出来る様に再築ガイドラインを策定したり、古民家鑑定の評価方法や調査項目を定め、古民家を未来に残すための様々な活動を行っています。
古民家鑑定士とはこれらの指針を元に、一般財団法人職業技能振興会が定める資格認定規定に基づき登録された者で、古民家インスペクションの専門家です。
今回の講習では古民家鑑定、床下インスペクションの他、古民家の耐震診断法として伝統耐震診断の実例紹介もありました。
古民家は現在の在来工法の住宅とは構造に対する考え方が異なるため、耐震診断や耐震補強の方法も在来工法とは異なるものが要求されます。
今後の古民家鑑定士の役割
古民家鑑定を受けるメリットとしては、より正確な建物コンディションの判断、今後30年間のメンテナンススケジュールの把握、資産価値の維持、リフォーム修繕箇所についてのアドバイスを受けられる事などが挙げられますが、固定資産税の評価が0になった建物に新たな価値を生み出す事が可能になるのが最も大きなメリットといえます。
一方、不動産の鑑定評価書ではないので、不動産売買のための法的証明などには利用できないので注意が必要です。
古民家鑑定士の資格は、工務店、リフォーム会社、建築設計事務所に勤務する人が自らの仕事の幅を広げるために取得するケースが多い様ですが、最近では伝統工法で建てた古民家がフラット35基準をクリアしたり、古民家リフォームが長期優良住宅リフォームに適合する事例などもある様で、古民家を取り巻く環境や古民家ユーザーの要望も大きく変化しています。
しかし一方では、形ばかりの古民家改修事例も少なくない様です。
今後減少が予想される伝統的な古い住宅が快適な生活空間として生まれ変わり、我が国の住文化や技術を継承させていくためには、古民家、伝統工法について正しく理解する事が必要だと思います。