住宅の現場監督の仕事とは?

新築でもリフォームでも、工事が着工すれば現場監督の出番になります。
資材や職人を工程に合わせて手配し、現場を円滑に運営するのが現場監督の役割ですが、他にも品質管理や原価管理、安全管理など現場監督の責任は多岐に渡ります。

建物を完成させるためには絶対に不可欠な存在なのですが、「現場監督の仕事」を詳しく解説した専門書や参考書が書店で売られているのを見た事がありません。現場監督は独学で覚える仕事なのです。

私がこの業界に入って最初に就いた仕事が現場監督でした。
一口に現場監督と言っても、一戸建の住宅と鉄骨造や鉄筋コンクリート造のビル現場では仕事の内容がだいぶ違ったので、ここでは一戸建住宅の現場監督についての話をしたいと思います。

一戸建住宅の現場監督には、基本的には見習い期間などというものはありませんでした。(ビル現場の現場監督には、現場所長になるための見習い期間がありました。)
最初の1か月程度は上司や先輩の現場監督と一緒に現場を廻って、大工や職人との接し方や、資材の手配先などの手ほどきを受けますが、すぐに現場を担当させられ、責任を負う様になります。そして複数の現場を掛け持ちで担当するのが普通です。
もちろん新米の現場監督が最初から大工や職人に指示などできるはずがありません。
現場で大工や職人の仕事を見たり、時には作業を手伝ったりしながら教えてもらうしかありませんでした。
職人が親方から技術を盗むのと同じように、現場監督も現場で仕事を見て覚えるのです。
私も初めは現場に行くのに、簡単な大工道具持参は欠かせませんでした。5寸釘を曲げずに打てる様になって、初めて口を聞いてくれる様になった大工もいました。

実はこの時の経験が現在の仕事にも非常に役立っています。
現場を一目見れば、「作業しにくい場所」や「欠陥が発生しやすい場所」、「手を抜きやすい場所」がわかる様になったからです。

そして「工事管理の実務」とか「現場管理のチェックポイント」などの専門書を買って勉強しても、現場ではベテランの職人から「今までずっとこのやり方でやってきた」、「現場では教科書通りにはいかない」などと言われてしまって、なかなか言う事を聞いてもらえません。
時間をかけて職人との信頼関係を少しづつ築き上げ、大工や職人から一人前の現場監督と認めてもらう様になるまでには、10年近くかかるのが普通です。

顧客管理という現場監督の大切な役割・・・。

現場監督にはもう一つ大切な役割があります。それは顧客管理という役割です。工事が始まれば、建築主に工事の進捗状況を説明したり、建築主からの質問や頼み事に応えるのも現場監督の仕事です。
現場監督には営業マンや設計担当者と比較すると、口ベタ、説明下手でとっつきにくい印象の人が多いイメージですが、その様な傾向にあるのは事実です。しかし、口先だけで誤魔化そうとせず、誠実な人が多い様に思います。そうでなければたくさんの職人を使って現場を運営する事はできません。また、良い職人は良い現場監督に集まる傾向がありました。
下請け業者の社長が、品質管理に厳しい監督には腕の良い職人を、そうでない監督にはそれなりの職人を割り振る事も良くある事です。

そして現場監督は、時には建築主と職人、建築主と会社の板挟みになる事もあります。
現場での建築主からの軽い変更要望のために、頭の中がパニックになってしまう新米監督もいます。
工程に合わせて手配済の資材や職人の段取りが、白紙になってしまう事もあるからです。
工期が遅れた、建築主からクレームを受けた、労災事故が発生した、現場で発注ミスや手直し工事があって予定利益が確保できなかった・・・
これらは全て現場監督の責任になります。現場監督の背負う責任範囲は非常に広く、想像以上に過酷な仕事なのです。
工期が遅れ気味で引渡し日が迫り、心配で眠れなくなる事も・・・。
ノイローゼ気味になって突然出社しなくなってしまう現場監督もいました。なり手が少なく離職率が高い職業です。

そして住宅現場の現場監督は、繁忙期になると10棟以上の現場を抱えている事も珍しくありません。
職人や資材を手配するのが精一杯で、現場に行くのはせいぜい週に1回程度などという事もあります。
他にも現場でのトラブルなどを抱えていたら、精神的にも肉体的にも疲労の蓄積が酷く、見落としやミスも発生しやすくなります。
当然十分な品質管理は期待できないでしょう。
これが住宅の施工品質は「大工や職人の腕次第」といわれている所以です。
良い住宅を建てるためには、良い現場監督との出会いが欠かせません。

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